茗荷−−夏の詩
               斎藤宣彦



照らすもののない店先で、私たちは、茗荷を買う
駅前、店先、と、字面を思い浮かべながらの夕暮れ
ポリエチレン、と、しりとりすら拒まれる袋小路
目地の笑いを気に留めず
曲がり角がいくつも見えれば手前のものから曲がってしまう私たちは
旬のものを手に入れるのが新しいことかのように
購うものとなり
(ミ・ヨ・ウ・ガ)
(カ・イ・ワ・レ・ダ・イ・あ、
(ガ・ン・モ・ド・キ)
眼前の壁面のその途方に、暮れる
 
袋から取り出したそれを
私たちの手指の位置を確かめて
落とし(はじめて)
軽いくだり、道路を家路と読みかえ
そのくだり、滑る爪先を見ようが見まいが
(はじめて視線を落とす)五分とかからない
街灯の道を
鼻をすすりすすり戻り
たどりつく
小さな部屋のシルエットとして、私たちの
 
そら豆を茹でる
瓜を塩漬けにする
茗荷を刻む



斎藤宣彦
詩誌「ネダヤシコヤシ」同人。マンガ評論の仕事に『マンガの読み方』(宝島社)『ユリイカ 特集・高野文子』などがある。

<TOP>に戻る