冬の日 布村浩一 冬は終わり始めて 布団をたたく音がきこえてくる 花粉症が始まるシーズンで みねざき眼科医院で 眼薬を二つずつもらってきた 炎症を抑えるものと 予防するもの それを五分の間隔を置いて眼に差すのだと ぼくと同年代ぐらいの女の先生が言っていた 冬は終わり始めた 窓ガラスにあたる日の強さと大きさで そんなふうに思う 厚いジャンパーと緑色の手袋で 屋根のない大きな建物のところまで歩いた あしもとの方に落書をする だいだいの日と二本のロープの青 雪のなかで大きな足跡をつくる キラキラした冬の匂い スピーカーから音がながれて 古い映画音楽だと思う ギターの切れ切れの音が歩いている間じゅう大通りに流れる 長いタイトルだったように思う 駅に向かって歩いていても 何も思い出していない 舗道のそとに雪が積み上げられている ぼくにも煙草を吸わない日が やってくる 布村浩一 詩集に『ぼくのお城』『大きな窓』など。 ホームページ:喫茶店 <TOP>に戻る |