一日の終わり
                坂輪綾子




僕の座るところは
くぼみで決定されている
おしりは一駅かけて沈んでいって
胸にあごをうずめて
前のひとの産んだたまごをあたためる

生ぬるい
消毒槽につかる
銀色の棒にぶらさがって
腰から下をゆする

こわいこともだいじょうぶ
手に入れることができたんだから
手放すことだってできる
僕の気持ちのスピードはまるで暴力的だ

目をつむると暗くて
ごうごうとかがりがりとかひっきりなしに
音が僕の体をけずっていく
細かくこまかくこまかく
僕は分割されていく
もうとっくに死んでいるのかと
目も開けられないでいた
一日に終わりなんて
本当に来るの?



坂輪綾子
詩集に「夜の行進」「かんぺきな椅子」(東京美術)がある

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