花模様 北爪満喜 せまい坂の商店街の灰色につづく壁にそって 私の顔の引き延ばされたポスターがおおきく貼ってあった 壁に並んで貼ってある ガラスのドアにも貼ってある モノクロの粗い粒子の浮いた 私の顔の 目は漂って 唇はゆるくとじている どうして貼られたりするのだろう 肩までもある モノクロの顔を 立ち止まって撫でてみた すると 指にねとっと冷たい 白濁した液体がついてきた だれかの 射精のあとが 顔に ポスターの表面についていたのだ 知らない精液に吐きたくなって うずくまって指の汚れを もっていたハンカチで拭き取った ビニールや紙屑の落ちている路地 投げすてると 水色のハンカチは ゆっくりと 空に弧を描き ひらりと 花の模様が光って 咲きみだれる花が 風にいっしゅん 菜の花ばたけのようにまたたき ふんわりと 宙を舞い降りた 咲きみだれる模様の花が光って 私から ハンカチが 飛んで離れた 宙をゆくその花からは きんいろの音が 陽差しのように ゆっくり アスファルトの路地へあふれる それから ぱさりと地面に落ちた 咲きみだれるハンカチの花が 光って 北爪満喜 1956年生まれ。詩集に『ルナダンス』『暁:少女』(以上書肆山田)『アメジスト紀』『虹で濁った水』 (以上思潮社)がある。 ホームページ:MAKI'S Modern Poem Page <TOP>に戻る |