VネックのV
サルサのライブを終えて楽屋に引き上げる
「盛り上がったねー」「ギャラ幾ら貰えんのかな?」なんて
メンバーのみんな、上機嫌で喋りながら着替えをしている
「お客さん何人来たか、後でマスターに聞いてみるよ」
そう言いながらぼくもセーターをかぶる
…セーターをかぶる時ってのはいつもながら不思議な気持ちだな
潜水してるみたいな感じなんだな
視界が遮られると
とりあえずその間は他のことを何も考えないでいい
上昇してないのに上昇だ
薄暗さが薄明るさにみるみる変わって
VネックのVから
パッと飛び出る
はい外です、おかえりなさい
と、傍にはフルートの平井君がいて
丁度ぼくと同じタイミングでVネックのセーターをかぶり終わったとこだった
目と目が合って
ちょっとニコニコする
お互い何も喋らないけど、さっきまで同じ場所にいたんだよな
平井君、Vの字から生まれた気分のまま
マスターに今日のギャラの額を聞きにいくからね
楽しみにしてなよ
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