ウルトラ兄弟磔
土曜日の午後、住人は皆外出しているらしくアパートはひっそりしていて そのせいか庭ではノラ猫たちがいつもより騒々しく追っかけっこに興じている いっちょサービスしてやるか いつもカリカリじゃ飽きるだろ、ほれっ 豚バラ肉を茹でて、猫たちに投げて与えた やっぱ新鮮な肉は反応が違うね 一斉にこちらを向く、その目は真剣そのものだ 力を込めて投げた肉片を まるでプロのサッカー選手のようにさっと前足で受け止めていく 放り投げると高々とジャンプして受け取る いつもは鈍くさいソラさえも体をひねって空中で肉片をキャッチ シシも(ぼくに警戒の態度を示しつつ)軽やかな走りを見せる へぇー 猫の潜在的な身体能力ってやっぱすごいんだ ところがそこへ闖入者が! この辺りで一番体のでかい茶トラ猫が柵を潜り抜けて肉片に飛びついたのだ! ウーッとうなりながらレドが猛然と前に出る 姿勢を低く保った姿勢でファミがレドをフォロー ソラとシシは毛を逆立てて後方を守る 茶トラは肉片を放し、慌てて逃げていった 誰にも教えられてないのに一瞬で陣を作りやがった すごいチームプレイ、そして郷土愛 この庭は私たちのもの だから力を合わせて守らなきゃ って感じか? 今日のところは撃退できたけど もっとすごい奴が現れたらどうなるんだろう? ふと 大昔に見た特撮ドラマ「ウルトラマンエース」のエピソードを思い出す(注) 映りの悪い画面の中で ゴルゴダ星に集まったウルトラ兄弟たちは十字架に磔にされていた ヤプール星人に謀られたのだ あのウルトラ兄弟が……子供心に大ショック 幾ら勇気と力があっても、敵わない時は敵わないんだ この回を覗き見たお袋は顔をしかめ 近所のおばさんたちに「最近のテレビってほんと残酷よ」とまくしたてていた ヤプール星人のようにずる賢い茶トラ星人 マタタビに毒を仕込まれてウチの猫たちは動けなくなってしまった さて ウルトラ兄弟たちは鎖で十字架に縛りつけられていただけだけど ここでは本家イエス・キリストにならい、釘づけでいきましょうか (ここから先は残酷シーンが続きますので 特撮人形アニメの形でお送り致します) 茶トラ星人はぐったりしたレドを引きずって木にくくりつけ 掌のぷにゅぷにゅの肉球に 重たいトンカチを使って長い長い釘を打ち込む! ガチーン、ガチーン 右前足が終わると左前足へ、それから右後足、左後足 哀れ、レドはバンザイの恰好で木に打ちつけられてしまいました お次はファミ 茶トラ星人はファミをロープで縛りあげ カラスが突くのに丁度いい高さまで吊り上げると ガチーン、ガチーン (ご心配なく、って言ったってやっぱり見たくないよ) ピンクのぷにゅぷにゅに深い深い穴があく 高い幹に釘づけにされ、口から泡を吹いているファミを見て 茶トラ星人は汗を拭いながら高笑い そしてソラ レドが打ちつけられた木の隣の木に おおっ出た、逆さ磔 まるで「クォ・ヴァディス」の聖ペテロのようだ 右後ろ足のぷにゅぷにゅから順番にぶっとい釘が打たれる ガチーン、ガチーン 耳としっぽがだらりと垂れ下がった姿に茶トラ星人は手を叩いて大喜び 最後はシシ 何か凝ったポーズで苦しめてやろうと腰に手を当てて考えていたようだが 結局思いつかず ソラの隣の木に、オーソドックスな(?)大の字の姿に打ちつける ガチーン、ガチーン ぴくぴく震えるシシの腹に蹴りを入れて 作業完了 壮観じゃねえか 宿敵を全員首尾よく磔にすることができて茶トラ星人は超爽やか気分 猫たちは体こそ動かないが意識は明晰であり 打ちつけられた釘で体重を支える苦痛を一瞬ごとに深く味わわねばならない 裏返りそうな目玉の動きで苦痛の深さがわかる それを目の当たりにすることこそが茶トラ星人の喜び ガッツガッツのガッツポーズ 更に何度もとんぼ返りして喜びを全身で表現する 勝った、勝った、やっつけた 人形たちが繰り広げる残酷劇の一部始終を眺めながら ぼくはぼんやりと考えた この子たちの里親捜しができないものだろうか 近くに猫ボランティアの活動をしている人はいないだろうか 2匹程度なら実家で面倒を見てもらえるかもしれない…… (注)円谷プロダクション制作「ウルトラマンエース」13話 「死刑! ウルトラ5兄弟」(1972年放映)
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