爪と牙
真夜中
今日2回目のミルクを飲ませて
おなかいっぱいになったノラ猫たちの前に
細長いものをちらつかせる
さっき引っこ抜いてきたばかりのネコジャラシだ
もう何度も遊んだことがあるので
子猫たちはぼくがネコジャラシを手にしているだけでソワソワした表情になる
近くの駐車場に向って歩き出す
いつもの場所だ
子猫たちはジグザグに走りながらついてくる
ママ猫のクロだけはアパートの入り口で立ち止まってぼくたちを見送る
感心、感心
ノラ歴が長いだけあってこいつだけはしっかり人間不信の原則を貫いてるな
駐車場についた
真夜中だから誰もいない
猫避けの、実は何の効力もない
水入りペットボトルが並んでいるだけだ
おもむろにネコジャラシを高く持ち上げて
大きく振り回す
振り回されるネコジャラシは
野原に自生していたネコジャラシとは全く別物に瞬時に変貌する
子猫たちは一斉に顔をあげ
ネコジャラシの動く方向へ目をキョロキョロさせるのだ
右に振ったら右へ、左に振ったら左へ
ネコジャラシが擬態している何かは
自在に変形しながら中空を疾走する
その先っぽは鉤の形をして
子猫たちの心を吊り上げては
放り投げる
その反動で奴ら
爪を伸ばしたり牙を剥いたり
おっ、飛びかかってきた
危ねっ
痛たたたっ
ネコジャラシの茎を握ってる手めがけて突進してきやがった
白い肢体に黒いしっぽ
レドだな、こいつはすぐカッとくるから要注意
右手の甲に長い爪跡が走って、赤い色が走っていた
流血、流血だ、ほんの少しだけど
飛びついて、裂く、という動作を繰り返す子猫たち
その様子を見ていると
こいつらホントに肉食動物だな、と思う
口を開いた拍子にのぞく鋭い牙を見てもそれはわかる
こいつらがライオンと同じ大きさだったらすごいだろうな
これだけすばしっこくて攻撃的なら
ライオンなんて、戦って数秒でオダブツだろう
もう1つ発見がある
猫がこんなに「2足歩行」する動物だとは知らなかった
頭上で揺れるネコジャラシに触れようと
よたよた立ち上がり、前足をびゅんびゅん振り回す
5歩も6歩も立ったまま歩く
そんなにまでしてアレを捕まえたいのか
捕まえても食べられる物じゃないことはわかりきっているだろうに
この深夜の遊びの最中
ドサクサにまぎれて背中に触っても頭を撫でても
怒らない猫がいた
それが、ここ最近のぼくの生活に光明をもたらしてくれている猫
三毛猫ファミだったのです
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