透明なエビ
しまった、ちょっと目を離していた隙に 部屋に溶け込んで逃げてしまったぞ かゆくなった目をこすっている間に消えてしまったそいつ 「メガネ」の形態を明確に保っていたそいつは ぼくの腕が立たせた机の上(?)か本の上(?)で ぼくの監視がゆるんだのを確認するや色を消して逃げ出した スタコラサッサと逃げ出したのさ、チクショー あいつの働きなしにあいつを発見することは難しい 「メガネ」、あいつは ぼくが目を向けた方角のものに 「形態」を着させてぼくに捕食させるのが仕事で そんな仕事を好きでやってるぼくのパートナー、とばかり思ってたのに 透明なエビのように 床に散らばったTシャツ、フロッピーディスク、電卓、雑誌、の上を あいつ、歩いてる、スローモーションかけたダンスのスタイルで歩いてる 数打ちゃ当たるだろうって めくら滅法に腕を振り回してヤツを探し当てようとしてみたが だめだ、部屋の中では輪郭と輪郭が絶えずぶつかりあい からみあい、こんがらがっている 危なっ、ハサミと腕時計がもつれ合っている 片目と一つ目が重なり合ったところでピーンと短針と長針が重なり合う ぶくぶくっと泡のようなどよめきが起こる 見つけられない、あいつ くそっ、ぼくの支配を潜り抜けて ぼくの背後を 柔らかく上下しながら移動してたり、するのだろうか なお探しにかかっているぼくの腕も 先っぽの方は床の迷彩に溶け込んでしまった 今頃どこを泳いでいるかしれやしない どうしよう、言いくるめられて 透明なエビの仲間に加わわっているとしたら! 背後から殺られる、それも運命かもしれないな でも、まだ時間はある、のかもしれないな とにかくこのこんがらがった輪郭の中に首を突っ込んでもうひと探ししてみよう
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