友達の声
パソコンの入力作業のしすぎで軽い腱鞘炎のような状態になっている 手首から肩にかけての腕の筋がキリキリ痛む コピペを行う時、マウスを握った手首をひねる動作がいけないらしい 対処療法しかないねえ、と医者には言われた 作業途中に休みを入れる、腕を回す運動をする、筋肉をほぐす薬を飲む それで症状はだいぶ良くなったけれど 痛む時は痛むんだ さっきも会社から持ち帰った資料をエクセル表にまとめていたら 肩がずーんと重くなっていたのさ こりゃまずいと思って慌てて腕を休ませた 鈍痛がゆっくりゆっくり肩の内側から流れ去っていく 「一種の慢性病だから完治よりはうまくつきあっていくことを考えなさい」 なるほど ぼくという人間はこの痛みと離れられない関係になったわけか 幼い頃永久歯に虫歯ができた時のように 高校生の頃受験勉強の最中に近視になったように まだまだこれから 「歩行困難」や「記憶の欠落」と離れられなくなる可能性もあるぞ そういうものとも「うまくつきあっていく」ことが大切で つまり肉体の劣化現象っていうのは「お友達」なんですね 年を取るほどに友達が増えるって、何だかいい そいつらは時を選ばずぺちゃくちゃ話しかけてくる ぼくは始終そいつらを気にして そいつらを気にすることがぼくの日課となり目標になる 急にそいつらがいなくなったらどんなに寂しくなるだろう ぬるめのお湯にいつもより長い時間浸かって じっくり肩を温める もう痛みは感じられない しかし耳を澄ますと 微かな微かな、微かな声が肩の奥から聞こえてくる それは これから一生つきあっていかなければならない 大事な友達の声なんだ
<TOP>に戻る