見えないものと動かないもの
ビールを買いに行った帰り よれよれTシャツにサンダルつっかけたカッコで夜道をぶらぶら歩いていると 突然、何かが足元を走り抜けた 猫? 微かに接触したようだけど 暗くて見えなかった 猫のようなスピードがぼくの踝と踝の間に生々しく残っているだけ ビールを飲み終わってテレビも消して 歯磨きしようと洗面台に立つ 目の前にはコンタクトレンズの洗浄液の壜が二つ並んでいる 一本買ったのを忘れてもう一本買ってしまい しかも二本とも開けてしまった 何となく交互に使ってコンタクトレンズを洗っている こういうところにぼくのズボラな性格がよく出てるね 他に見るものもないので いつものように二本の壜を見つめながら歯を磨く ん?  いくら見つめても見つめても動くことのない二本の壜に ひゅっと 猫のようなスピードがまとわりついて、去る え、待ってよ、そうなの? 全然似てない、全然似てないのに 見えないものと動かないもの 力をあわせて さっきのぼくの影像を再現してくれたの? ぼくはこんなにもぎこちない 乱造されたロボットのような足取りで ぽつんと夜道を歩いていたというの?
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