万葉の心




給料日の夜のこと
帰宅途中、ちょっと贅沢しちゃえと思い立って
渋谷駅前のロシア料理店に立ち寄った
店は混んでいたけど幸運なことに窓際の席がぽっかり空いていた
一人で来るのは初めてだな
乗せる人もまばらなバスがターミナルから発進するたびに
瞬きを送っているようなキャンドルライトになごみながら
ピロシキにボルシチにビーフストロガノフ
たっぷりのボリューム、どれもこってりしててうまい
酒に弱いくせにウォッカもしこたま飲んで
たまにはロシア料理もいいもんだなとしみじみ思う
そう
しみじみ思っちゃうんだよね
ぼおっとした頭に次に浮かぶのは
そうです
ファミ、レド、ソラ、シシ、クロのこと
「瓜食めば　子ども思ほゆ　栗食めば　まして偲はゆ」
こんなうまいもん、こいつらに食わせてやれたら……
もちろん塩っ気もカロリーも多すぎるロシア料理は猫たちには毒だけど
それでも、食わせてやれたら、なんて思っちゃう
さ、早くお茶を飲み終えて御勘定だ
今夜はカリカリじゃなく、猫缶を出してやるとするか