きょとんとした 曲がり角まで
きょとんとした 曲がり角まで スニーカーの触覚にこづかれ つんのめる たちまち四方から強烈な視線の光が 穴のあくほど顔を焼く 後ずさりしてしまう と 一斉に立ち上がった 巨人がむっとくる胸毛を押しつけ 鉄柵の腕でぼくを抱きすくめようとする! すばやく愛情に 釘をさせ てくてく てくてく 瞼の上を歩かされ 見上げられる姿勢のままだ ぉっとっと 足が滑った 影が映りすぎないように気をつけなきゃ 例えばテッポウウオの 標的にでもなったらもうおしまい 爪は良く切ってあるし コンクリートにしがみつき通すなんて無理 ビクビクしたって始まらない 無脊椎な楽しみに耽って 皮膚をかすっていく速度(スピード)に 噛みついたり じゃれたりしながら ついていく 仄白い脳髄が どんなに唐突に奇声を発しても うずくまって耳を塞ぐのは ぼく一人だけ クモの形に膨れていく視野が 網にひっかけた 羽のようなめまい 小刻みにバタバタ震える暗闇を押さえつけ そっと白昼の方へ耳を傾けてみる (誰か通らないかな わっ) シンバル? 目をつむったまま ぼくは遊んでいるのだろうか 熱のある日だから くねった道を直線として捉えてしまうんだ 瞳の中に横たわる いびつな一本道を信じきっていると 突然 電柱に頭をぶつけたり 急ブレーキに胸ぐらをつかまれたり 頭を一回転させて きょろきょろ辺りを窺ってみても モノクロームな風景に変化はないのに もう手足をもぞもぞ動かしたくなってきた 太いのやら細いのやら 足許から這い登りからだ全体にからみつく ミミズのような 赤味を帯びた道たちとの 情交 二又に別れちゃった 彼女の流れ 信号機を境に 撫で肩の通りが別の方向にしなっている 左右から後期の目で見つめられ ぼくの足はすくんでしまう どっちを歩いても もう片方の未知のカーブや坂に憾まれそう いつでも逃げ出せるように 子猫の低姿勢を真似 立ち止まって 覗き込む 血のかよった白身が 誘いこもうとする 穴場を 肩は弓なりになって ジェットコースターのレール ガキのお守りで疲れたでしょ? 人っ子一人いなくなっても からだの曲線だけははしゃいでる 夕方の遊園地の脇をつんのめっていく あの鉄骨の盛り上がり 襲いかかってきそうで こない ただ 小便のあとブルッとからだを震わせると あいつ ぼくのシャツで手をふいたんだ *詩誌「卵座」9号(1989年4月1日発行)に掲載
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