記念撮影
高い所に昇って下を見る
親戚が遊びに来て、じゃあみんなで日帰り旅行でもしよう、なんて時に
出くわしたりする情景が
今まさにぼくの目の前で広がっている、ということ
ぐるっと360度ガラス張りの○○タワーの作りは全国共通
快晴の海の波の襞一枚一枚が
ぼくの生きる時間を小刻みに奪い取っていくのがわかる
まあ、生まれたての赤ちゃんにだって「余生」くらい発生するけどね
掌をぺたっと窓ガラスにつけ
奪い取っていくものの表情と対面していると不思議に飽きることがない
この瞬間、何かの拍子でぐしゃっと空間に歪みが生じて
ぼくのいる位置が遠い他所のどこかに転写されるようなことがあったとしたら
「誰もいないはずの校舎の窓ガラスに人の掌がぺたっと張りついていました」
ということになるかもしれない
あ、それ、ぼくなんですよ、と言ったとしても信じてもらえない
仮にぼくの掌が
限りある生命体であるぼくに見切りをつけて
空間の歪みに乗じて延命を図ろうとしても結局
一枚の心霊写真と怯えた顔の女子中学生の談話の中に散って
多分、そこでおしまい、その先はない
おっと
膝の後を女の子がとととっと元気に駆け抜けていった
えーっと、名前は…花梨ちゃん、だっけ?
「ほらほら、あんまり走っちゃ危ないよ。おじさんが景色見せてあげるから」
抱き上げてやるときゃっきゃっと喜んで
窓ガラスに掌をぺたっとつけた
そんなに波の表情が面白いかい?
ところで、いつのまにか
おじさんと一緒にどっかの古い校舎で「記念撮影」されてるかもしれないんだけど
それでもいいかい?
|