一方的
ヒマつぶしに自分の名前でネット検索することがあるんだけど 今日、こんなの発見しました★ ***** 神楽坂の有名料亭で10年の修行を積んだ辻和人さん(35歳)が神戸で鰻割烹「肝屋」 をオープン。繊細な味付けと大胆なアイディアで評判を呼んでいる。秘伝のタレを使った 蒲焼き、ほろ苦さと甘さが絶妙のハーモニーを奏でる肝吸い、イタリアンやフレンチの技 法を取り入れたオリジナル料理など、通の方から若い方まで大満足。美人のおかみさんの 笑顔と一緒に、さあどうぞ召し上がれ! ***** グルメサイト「ウマいの一番」で 同姓同名の「辻和人」さんの働きぶりが取り上げられたようなのだ 店内の様子(オシャレな和風バーみたい)の写真はあるけど あいにく「辻和人」さんの顔はわからない 鰻は高いから滅多に食べにいくことはない 個人的にはさっぱりした肝吸いが特に好みで イタリアン&フレンチ風味は願いさげ、だけど、そんなことどうでもいいや 「辻和人」さんはねじり鉢巻が似合うような威勢のいい人で 超早起きで、接客もハキハキしていて 無駄なことは一切考えないような人、なんじゃないかな? でもそう想像してしまうのはぼくの勝手もいいところで 本当は結構デリケートで、何か他人から指摘されると いつまでもウジウジしてしまうような人、かもしれない 神戸で評判の鰻屋さんを仕切っている「辻和人」さんは 懐具合の関係で滅多に鰻を食べないという 東京で詩を書いている「辻和人」さんに発見されてしまいました 「…はじめまして、辻和人です。詩を書いてます。えーと、すごいきれいなお店ですね。 といって、サイトに掲載されているちっちゃい写真を見る限りにおいてですが。こういう 時に掲載する宣伝用の写真はアングルに工夫をするのが当たり前だし、本当はもっと狭く て安っぽい感じの店なんですよね? いやいや、責めているわけじゃありません。同じ立 場ならぼくだってそうします。ところでお美しい奥様がおられるとのこと。羨ましいです。 ぼくなんかこの歳(45歳)にもなってまだ独り身で情けないもんです…あーはーっ、ク シャッ、すいません、ちょっと風邪ひいてるもんで。あのー、ちょっと断っておかなけれ ばいけないことがあるんです。実はぼくは「辻和人」さんに全然興味ないんですよ。ほん と、ぜんっぜん。申し訳ない。でもまあ、同じ名前のよしみってことでお許し下さい。い つかお店にうかがいますよ。楽しみだなあ。でも、ぼくって旅行はほとんどしない人なの でほんとに行けるかどうか責任持てませんが。えーと、とりあえずここまで……」 記事に記載された「辻和人」さんに手を振って カチッ、「お気に入り」に登録 もう逃げられない 仮にこのページを削除して逃げようとしても 誰かが話題にする限り(改名でもしない限り) マウスでぴっぴっと追跡される でも、ぼくの方もとっくの昔に見つかってるかもよ 「辻和人」さんに 「ふーん この人、東京に住んでるんだ この人、詩なんか書いてるんだ この人、趣味でラッパ吹いてんだ この人、いい歳してまだ独身なんだ 俺、詩なんて滅多に読まないけどなあ」 ぼくがこの詩を発表したら、きっと「辻和人」さんは 「東京の辻和人さんは鰻は滅多に食べない」ってとこだけいつまでも記憶するだろう 誰だって専門のことには敏感だから 多分、「辻和人」さんにとってぼくの印象はそれだけ それ以上ぼくに対する関心が深まることはない でも、「辻和人」さん ぼくの方は違う これからも何度も何度もあなたのもとを訪れることでしょう そしてあなたの現状について想像を巡らすことでしょう お子さんは高校に入学したかな? あの趣味の悪い掛け軸はいい加減取り替えたかな? 「辻和人」さんのことを思うことで ぼくの暇な心は幾分か満足し、意味なく癒されていく せっかく知り合った、じゃない一方的に知った記念に 今日の晩御飯は鰻にしよう 5年前に入ったきりの近所の鰻屋さんに足を運んで 特上の鰻重と肝吸いを注文しよう ありがとう、「辻和人」さん あなたを一方的に知ったおかげで 滅多にしない贅沢をすることができるよ それじゃ、「辻和人」さん これらの言葉はぼくのサイトにアップしとくから 心が暇な時、一方的に ぼくを見つけて会いに来てよね 意味なく癒してあげるからさ
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