イナバウアーのその後
イナバウアーというのは
2006年トリノ・オリンピックの女子フィギュアスケートで金メダルを取った
荒川静香選手(当時24歳)の得意技です
……とぼくは2006年3月のまだ興奮冷めやらぬうちに書いているのですが
この詩を読んでる皆さん、何のことだかわかりますか?
えー、先を続けます
イナバウアーはドイツのイナ・バウアー(Ina Bauer)選手が1950年代に始めた技
上半身を反らした姿勢を保ったまま滑るもので大変美しいのですが
うまく決めたとしても高得点が出るというわけにはいかないのだそうです
でも荒川選手は、自分が心から「やりたい」と思ったこの技を
たとえ得点を稼げなくとも競技の中で使うことにしたということです
えらいですね
イナバウアーは大評判になり
荒川選手は「イナバウアーはわたしより人気がある」という名言を残しました
亀がイナバウアーを行う姿まで(実はただそっくり返っているだけ)放映されました
……以上がぼくが知っている限りのイナバウアーについての乏しい知識の全てです
間違っているところがあったらごめんなさい
荒川静香選手のオリンピックでの演技は間違いなくすばらしいものだったけれど
それはさておき
イナバウアーがこれからの時間の経過の中でどんな変化を遂げていくのか
ちょっと興味がある
イナバウアー、イナバウアー……
目をつむって繰り返しているとこの洋菓子のように聞こえてしまう名前が
闇の世界の中で、実際に
崩れかけた白いぶよぶよしたケーキの形態をまとって浮かんでいたりする
それはとても食べられたものではなく
その形態同様不定形な時間の中をすーっと滑っていくんだ
クラゲのような軟体の生物に似ているようで似ていない
イナバウアーは生物から派生はしているけれど生物ではないのだから
そしてジグザグに滑り続けて
回収不能なほど遠い地点でゆっくりゆっくり着地して
そのまま永久に埋もれてしまう……
2006年3月の段階では、今をときめいているイナバウアーが
いつか「何だっけ?」と言われることがあるかもしれませんね
その時、さっき書いたみたいな心への浸食作用がぼく以外の日本人にも現れることがあるんだろうか、と
ぼんやり考えたりするんです
ひょっとすると「日本」がなくなっているかもしれませんが(笑)
とりあえずは、この詩を受け取ったあなたのイナバウアーに対する印象を
聞いてみたいものです
ぼくの方がいなくなっている可能性もありますが(笑)
とにかくご家族かご友人にでもちょこっと話してみて下さい
「ぼく」もなるべく現れるようにしたいと思います
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