膝をかかえて
目が覚めると膝をかかえて眠っていたのだった 夜はまだ続いている 姿勢を仰向けに変えて思わずふーっと息をついた すると、ぼくの胸と膝の間で生まれた 湿った洞窟のようなその空間は 細い息の流れに乗って おもむろに天井の暗がりのあちこちを うろうろし始めたんだ 前に会ったのはいつだったっけ? こいつは ぼくを守るために この世に使わされた式神のような存在であるぞよ 忘れた頃にぼくのもとを訪れては 息ほどの暖かさを残して消えていく 顔を思い出せなくなった友だちのような存在であるぞよ 睡眠時の姿勢の偶然によって 生まれることがあるだけで ただの空っぽの空間だし 意志の疎通も図れない 一回一回かたちも変わり、連続性も認められない だけどぼくはこいつが結構 好き あ、眠くなってきた 次に出会う日はいつだろう? 「ぼくは君を抱きかかえてあげるから 代わりにぼくをすっぽり包み込んでくれよ」 相互に甘えられるこんな関係を 維持できているかな? 傍に誰もいなくてもこいつに看取られるのならば 文句はないね まだ天井の暗がりをうろうろしてる? ふわぁ、じゃ、おやすみなさい
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