月下の一群
ノラ猫たちと「お散歩」していると
「お仲間」に出くわすことがある
夜中に街のノラ猫にご飯をあげる"エサやり"さんたちだ
カリカリをいっぱい詰めた紙袋を抱えて
高級マンションから姿を現すロングヘアの中年の女
路上にビニールを敷いてカリカリを置くと、どこからともなく猫たちが集まってきて
その女を取り囲む
幾つかのノラ猫スポットを巡回しているらしく
猫たちが食べ始めるのを見届けると重そうに紙袋を抱えて闇の中に消えていく
出勤する頃には跡形もないので、早朝片づけていくのだろう
そして大型車で駅前の小さな路地に乗りつけて
出入りしている猫たちに
大量の猫缶と水を与えていく男
猫缶の中身は既にボウルに移してあり
新聞紙の上に一気にぶちまけるという荒業だ
(猫缶は人気があるのでたちまち売り切れますです)
さっと降りて、またさっと走り去ってしまうので
長身の男性ということ以外全く不明
けど、車に乗り込む時に上着を翻す様がちょっとかっこいいんだな
猫たちに話しかけながら歩く若い男女のカップルもいる
ノラ猫に出くわすといちいちしゃがみこみ
頭を撫でながらカバンから食べ物を取り出す
どの猫もこのカップルには相当なついているようで
すぐ近寄ってくるし、甘える仕草も見せる
一匹一匹に時間をかけて接し
愛情面のケアも担当しているのがミソだ
不倫よりも万引きよりも知られてはならない
背徳の行いに殉ずる者たち
この人たちのことをぼくは勝手に
「月下の一群」って呼んでいる(曇りの日の時もあるけど)
面白いのは
彼ら(というかぼくら)が、決して交わろうとしないこと
ほぼ毎日、同じ時間帯に、同じ地域を徘徊しているわけだから
ばったり会ってしまうことは避けられないんだけどね
実際、カップルとはよくすれ違う
一度、ぼく・カップル・紙袋の女が十字路で鉢合わせしたことがある
正直どうしようかと思った
でも
お互い一瞬顔色を変えた(ように見えた?)だけで
目も合わさず、足も緩めず、もちろん挨拶もせず
それぞれの方向に歩み去るばかりだった
これでいい
「月下の一群」は
実はちっとも「群」じゃない
縄張りの境界上で出会ったノラ猫同士のように
つーんと知らん顔を決め込む
余計なコミュニケーションなんて取りませんよーっだ
その間、ぼくが連れていた猫たちはどうしてたって?
のんびり集積所のゴミの匂いを嗅いでたよ
こらっ、汚いからやめなさいっ
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