曇天の行進
小学生の女の子が二人、ぼくの前を歩いている
体の半分を覆ったランドセルの陰から
短い手足をパタパタさせて喜んでいる
どんな顔の表情かはわからないが、微かに聞こえる声からしてきっと喜んでいる
面白いね、よたよたしてはいるが二人の歩調は合っている
右足と右足、左足と左足が一緒に前に出る
二人は自分でも気づかずに行進をしているのだった
ぼくは昼飯を食ってオフィスに帰る途中だった
時間はまだあった
追い越してもいいし追い越さなくてもいい
全くどうでもいいのだが
のろのろ歩いている
曇天
走り過ぎる車がうるさい
背の低いおばあさんがおまわりさんに道を尋ねていて
声が小さすぎるのか、おまわりさんは何度も聞き返している
あーあ、周囲にはぼくの注意をひきつけるものが何もなく
自然と目は数メートル先を行進する女の子二人に吸い寄せられる
吸い寄せられてしまえば、面白い、とぼんやり思う
ぼくの一生分の時間からこんな時間を集めて別のことに使えたら
ひと財産築きあげることができるかもしれないな
でも、そう考えると反発の気持ちも湧いてきて
一生の中からこんな時間を必死でかき集めて編集し、映画のように上映してみたくもなってくる
とにかく今のぼくの目の前にあるのは
よたよた行進する二人の少女を道案内にのろのろ歩いている曇天の時間
オフィスに戻ったら即、用事に忙殺されて記憶から抹消されてしまうだろう
だから目的地であるオフィスに
早くは着かないよう、早くは着かないよう
ますます注意して歩かなくちゃ
あ、数十秒後やっぱり気が変わって二人を追い越すことがあっても
振り返って彼女らの顔を見るつもりはないよ
だからぼくが路上から掻き消えた後も
二人は後姿しか持たないままずっとこの曇天の時間の中を行進し続けることになるんだ
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